ボットトラフィックAIクローラー計測

AIクローラーの急増とボットトラフィック|PVの数字は「人間」を語れているか

2026年08月13日 ・ MonaLens

最近、ウェブのトラフィックのうち人間が生み出している割合より、ボットが生み出している割合のほうが大きい、というデータが話題になりました。

大手CDN事業者のCloudflareが自社の分析基盤をもとに明らかにしたもので、多くのマーケターやプロダクト担当者に驚きを持って受け止められています。

この記事では、何が起きているのかを整理したうえで、PVや直帰率といったアクセス解析の指標にどう跳ね返るのか、そして実務でどう向き合えばよいのかを考えます。

ボットが人間を上回ったというデータをどう読むか

まず、話題になった数字そのものを確認しておきましょう。一つの発表だけで語られている話ではなく、複数の独立した調査で似た傾向が示されている点が重要です。

Cloudflareが示した57.5%という数字

Cloudflareの共同創業者であるMatthew Prince氏は2026年6月、自社の分析基盤Radarのデータをもとに、HTMLページへのリクエストのうち57.5%が自動化された通信(ボット)で、人間による通信は42.5%にとどまると明らかにしました。

これは同社が観測してきたなかで、ボットの割合が人間による通信を初めて上回った瞬間だとされています。

少し前の集計でも傾向は同じです。Cloudflareが公開した2025年のふりかえりでは、2025年12月時点でボットの割合がおよそ53%に達していたと報告されています。

セキュリティベンダーImpervaの報告でも同じ傾向

セキュリティベンダーのImpervaが2026年4月に公表した年次のボットレポートでも、2025年通年でボットが53%、人間が47%という同水準の結果が示されています。

前年の集計ではボットが51%、人間が49%だったとされており、比率が一段と進んだことになります。

集計対象や定義は事業者ごとに異なりますが、複数の独立した調査が同じ方向を指しているという点は、単発の話題づくりではなく実際に進行している変化として受け止める根拠になります。

ボットという言葉の中身は一様ではない

ここで注意したいのは、ボットという言葉が指す範囲の広さです。検索エンジンのクローラーのような善良なボットから、在庫を買い占める転売ボットや不正ログインを試みる攻撃的なボットまで、性質はまったく異なります。

話題になっている増加分の中心にいるのは、後述するAI関連のクローラーです。攻撃的なボットが急増しているというより、AIサービスが情報を集めるための巡回が新しい主役になっている、という理解のほうが実態に近いといえます。

以前からいた検索エンジンのクローラーとの違い

GoogleのGooglebotやBingのBingbotのような検索エンジンのクローラーは、ウェブが検索で発見される仕組みの一部として、何十年も前から存在してきました。多くのアクセス解析ツールは、こうした既知のクローラーをあらかじめ除外リストに登録しています。

これに対して、AI関連のクローラーは比較的新しい存在です。次々と新しいAIサービスが立ち上がり、それぞれが独自のクローラーを送り出してくるため、除外リストの更新が追いつきにくいという事情があります。

今回話題になったボット比率の急上昇は、この新顔への対応が追いついていない期間に起きている、という側面も見逃せません。除外リストの整備が進むにつれて、見かけ上のボット比率が落ち着いてくる可能性もありますが、それまでの間は数字を割り引いて読む姿勢が求められます。

AIクローラーは何をしにきているのか

では、そのAIクローラーは具体的に何をしているのでしょうか。目的別に見ていくと、単純な学習データ集めだけではないことがわかります。

モデルを訓練するためのクロール

一つ目は、大規模言語モデルの学習データを集めるための巡回です。Cloudflareの集計では、2026年5月に観測されたAIクローラーのリクエストのうち51.8%が学習目的だったとされています。

こうした巡回は多くの場合、サイト全体を網羅的かつ定期的に回るという特徴を持ちます。人気のあるページだけでなく、アクセスの少ないページまで機械的に回っていく点が、人間の閲覧行動との大きな違いです。

この負荷が現実の問題として表面化した例もあります。Wikipediaを運営するWikimedia財団は2025年4月、画像や動画などマルチメディアのダウンロードにかかる帯域幅が、2024年1月以降で50%増加したと公表しました。

同財団はこの増加の主因を、人間の閲覧ではなくAIモデルの学習データを収集するクローラーによるものだと説明しています。キャッシュが効きやすい人気ページを中心に閲覧する人間と違い、AIクローラーは無差別にページを回るため、インフラ側の負荷という形で影響が表面化しやすいのです。

検索・要約のためのクロール

二つ目は、AI検索や要約機能がその場で参照するための巡回です。同じ集計では検索目的のリクエストは9.3%にとどまり、学習目的に比べるとかなり小さい割合でした。

検索目的のAIクローラーが生み出す流入は、AI検索からの流入とは?|ChatGPTが生み出す新しい流入元をどう計測するかで扱った、人間の利用者がAI検索経由で実際にサイトを訪れる流入とは別物です。ここで話しているのはあくまで巡回そのものであり、人間の訪問ではありません。

エージェントとして「操作」しにくるクロール

三つ目は、利用者の指示を受けたAIエージェントが、その場でページを開いて情報を取りにくるパターンです。Cloudflareの報告では、利用者の操作に紐づくAIボットの巡回が2025年の1年間で15倍以上に増えたとされています。

これは学習目的の定期巡回とは性質が異なり、人間の行動を代理する通信という位置づけです。今後の計測設計を考えるうえでは、この種類の増加ペースがもっとも速いという点を覚えておく価値があります。

以下に、目的別の特徴を整理します。

種類 主な目的 特徴
学習用クローラー モデルの訓練データ収集 サイト全体を網羅的・定期的に巡回する
検索・要約用クローラー その場の検索結果や要約に反映 利用者の検索の裏側で動く
エージェント型アクセス 利用者の指示によるページ操作 増加ペースが最も速い

アクセス解析の数字への影響

この巡回の増加は、ウェブ解析が扱う数字にもそのまま跳ね返ります。具体的にどの指標が、どうゆがむのかを見ていきましょう。

PV・UUの水増し

もっとも直接的な影響は、ページビューやユニークユーザー数の水増しです。ボット対策を強化した企業で、導入後に解析上のトラフィックが目に見えて目減りしたという報告は珍しくありません。

数値はあくまで説明用の仮定ですが、月間10万PVのサイトのうち3万PVがボット由来だったとすれば、施策の効果測定はまるごと3割分ずれた前提のうえで行われていたことになります。この数値は説明のための仮定です。

直帰率・流入元へのゆがみ

ボットの巡回パターンは二極化しがちです。1ページだけ開いてすぐ離れる巡回は直帰率を実態より高く見せ、逆にサイト内を機械的に隅々まで回る巡回は直帰率を実態より低く見せます。

直帰率そのものの考え方は直帰率とは?「計測できない」ケースと、正しい下げ方で扱った通りですが、ボットの混入はそこで書いた計測できないケースとはまた別の、指標そのものの信頼性に関わるノイズです。

さらに、検索エンジンやAIのクローラーはリファラー情報を持たないことが多く、流入元の正しい見方|検索・広告・メール・SNSを分けて計測するで扱った直接流入の比率を実態よりかさ上げします。直接流入が増えているという数字を見たときは、ブランド指名での来訪が増えたのか、ボットの混入なのかを切り分ける必要があります。

指標ごとの影響を整理すると、次のようになります。

指標 ボット混入の影響
PV・UU 実態より多く見える(水増し)
直帰率 巡回パターン次第で高くも低くも振れる
直接流入の比率 リファラーの無い巡回が混ざり、実態よりかさ上げされる

ボットをどう見分け、どう向き合うか

増える一方のボット巡回に対して、解析側でどう向き合えばよいのでしょうか。完璧な除外を目指すより、現実的な線を引く発想が実務的です。

User-Agentベースの判定とその限界

もっとも基本的な方法は、アクセス時に送られてくるUser-Agentという文字列を見て、bot・crawl・spiderといった単語を含む通信を除外することです。代表的なAIクローラーは、それぞれ判別可能な名前を名乗って巡回してきます。

  • OpenAIのGPTBot
  • AnthropicのClaudeBot
  • PerplexityのPerplexityBot
  • GoogleのGoogle-Extended

ただし、この方法には限界があります。エージェント型のアクセスほど、人間のブラウザに近いUser-Agentを装う傾向があるため、名乗りだけに頼った判定はすり抜けを許してしまいます。

robots.txtとllms.txtという新しい合図

サイト側からクローラーに向けて意思表示する仕組みも増えています。従来からあるrobots.txtでAIクローラーのUser-Agentごとに許可・拒否を書く運用に加えて、2024年9月にはJeremy Howard氏がllms.txtという新しい規格を提唱しました。

llms.txtはサイトの要点をAI向けにMarkdown形式でまとめて示す仕組みで、Anthropic・Cloudflare・Vercelなど複数の企業が採用を始めています。ただしこれはあくまで任意の合図であり、守らないクローラーを技術的に止める効力はない点は理解しておく必要があります。

完璧な除外より「桁」を把握する

実務上、すべてのボットを取りこぼしなく除外することは現実的ではありません。むしろ大切なのは、自社サイトのボット比率がおおよそ何割なのかという桁感を持つことです。

解析ツールの中には、収集の時点でUser-Agentが明らかなボット・クローラーのパターンに一致する通信をあらかじめ除外する仕組みを備えているものもあります。MonaLensの収集の仕組みもその一つです。

それでも巧妙なボットはすり抜けるため、除外の仕組みがあるからといって数字を無条件に信じてよいわけではありません。仕組みはノイズを減らす手段であって、ゼロにする手段ではないと捉えておくのが安全です。

PMやRevOpsが数字とどう付き合うべきか

最後に、日々の意思決定でこの問題とどう付き合うべきかを考えます。ボットの存在を前提にした指標の使い方が鍵になります。

PVよりファネル・CVで語る

PVやUUといった素の数字は、ボットの影響をもっとも受けやすい指標です。一方でフォーム送信や購入完了といったコンバージョン行動は、通常のボットにとって再現しづらい振る舞いのぶん、相対的にノイズが少なくなります。

施策の評価軸を「PVが増えたか」ではなく「ファネルの通過率が上がったか」に置き換えるという発想は、ファネル分析の基本|離脱ポイントの見つけ方と改善の進め方でも触れた考え方と重なります。ボット混入への耐性という観点からも、この置き換えには意味があります。

もちろん、PVという指標自体が不要になるわけではありません。集客施策の規模感をつかむ一次指標としての役割は、これからも残ります。

ただし、その数字だけを根拠に投資判断を下すのは避けたいところです。コンバージョンやファネル通過率という二次指標とあわせて見る、という順序に切り替えるだけで、ボット混入の影響はかなり和らぎます。

定点観測でノイズの量を把握する

週次・月次でボットらしき通信の比率を定点観測しておくと、急にPVが跳ねたときに施策の効果なのか、ボットの流入なのかを切り分けやすくなります。

特に新しいAIサービスが公開された直後は、そのサービスに紐づくクローラーの巡回が一時的に急増することがあります。異常値が出たときにまず疑うべき候補として、この可能性を頭の片隅に置いておくとよいでしょう。

ボットらしき通信の比率を継続的に見ておくことは、単発の異常検知にとどまらず、四半期ごとの数字を比較するときの土台にもなります。ボット比率が横ばいであれば増減の理由を施策側に求めやすく、逆にボット比率自体が動いていれば、まずそちらを疑うという判断がしやすくなるためです。

日々の運用で確認しておきたい視点を、次に整理します。

  • 素のPV・UUだけを見て意思決定していないか
  • コンバージョンやファネル通過率など、ボットに強い指標も併用しているか
  • トラフィックが急増した際、ボットの混入をまず疑う習慣があるか

まとめ|混ざっている前提で数字と付き合う

ボットが人間のトラフィックを上回ったというニュースは、衝撃的な見出しではありますが、ある日突然始まった話ではありません。検索エンジンのクローラーは以前から存在しており、そこにAI関連の巡回が急速に積み上がった結果、比率が逆転しただけとも言えます。

大切なのは、この数字に驚いて何かを変えることではありません。自社の指標にどれだけボットが混ざっているかを把握し、混ざっている前提で数字を読む習慣をつけることです。

PVという入口の数字だけでなく、ファネルの奥にあるコンバージョンまで一貫して見る体制こそが、ボットが当たり前に混ざるこの時代の解析の土台になります。

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